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半導体産業におけるTOF-SIMSの分析アプリケーション

2021/11/10

TOF-SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:飛行時間型二次イオン質量分析法)は空間分解能に優れ、さらに深さ方向の情報を収集できる非常に感度の高い表面分析技術です。強力な微量分析ツールとしてさまざまな先端製造プロセスの研究開発に用いられています。この手法により、有機物と無機物の両方の分析に適した化学情報を得ることができます。

半導体のキープロセスは通常、長い研究開発と検証のプロセスを経る必要があります。特に、半導体プロセスがナノテクノロジーの閾値を超えた今、先端プロセスの開発を加速させるためには、より精密で正確な材料分析が不可欠です。ムーアの法則の限界を超え、“More than Moore”を実現するために、FinFET(Fin Field-Effect-Transistor), GAAFET(Gate-All-Around FET)などの半導体デバイス構造や材料の革新が続いています。近年、電子機器の高周波化、高出力化に伴い、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、第4世代半導体である酸化ガリウム(Ga2O3)などの化合物半導体が普及し始めています。これらの部品やプロセスの開発には極めて高度な分析技術が要求されます。

 

構造解析には微細な表面構造を観察できるSEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)、試料断面を観察できるFIB(Focused Ion Beam)、原子レベルの分解能を持つTEM(Transmission Electron Microscope:透過電子顕微鏡)などがよく使用されます。半導体プロセスにおけるドーパント分布分析では、注入イオンの分布やデプスプロファイルを得るためにSRP(Spreading Resistance Profiler:拡がり抵抗測定)、SIMS(Secondary-Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析)などが利用できます。

 

成分分析のための機器にはさらに多くの種類があります。これらはその分析原理や得意分野によって分類されます。検出感度が高い装置としてはICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:誘導結合プラズマ質量分析法)やセクター磁場型SIMSなどがあります。また、空間分解能が高い装置としては例えばTEMに搭載したEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光法)やEELS(Electron Energy Loss Spectroscopy:電子エネルギー損失分光法)があり、nmスケールで微量分析が可能です。

 

しかしながら、有機化合物または無機化合物の特定は言うまでもなく、高感度と高分解能を両立できる分析手法を見つけることは容易ではありません。ほとんどの場合、未知の成分の定性・定量分析には複数の装置の組み合わせに頼る必要があります。ところが、表面分析手法のTOF-SIMSは感度と分解能の両方の要求を同時に満たすことが可能です。そのため、有機・無機材料の分析、先端半導体材料の研究、先端プロセス開発やパッケージングプロセスの改善、さらにはバイオメディカル研究などに広く利用されており、非常に汎用性の高い分析ツールです。今回はこの分析技術への理解を深めていただくためにTOF-SIMSの原理を紹介し、いくつかのアプリケーションについて説明します。

 

 

TOF-SIMSの技術原理

TOF-SIMSは、まず試料表面にエネルギーを持つイオンを照射し、ターゲット領域から原子を吹き飛ばして二次イオンを発生させます。二次イオンは加速され、飛行時間型質量分析計に導入されます。これらのイオンはすべて同じ運動エネルギーを得ています。しかし、イオンの質量の違いによりシステム内では異なる速度で飛行し、検出器に到達するまでにかかる時間が異なります。TOF-SIMSはこれを利用して、電荷質量比の異なるイオンを区別し、組成分析を行うことができます。

 

得られた二次イオンの数(信号強度)から各元素の濃度を求め、イオン照射の時間を縦方向の検出深さに換算することができます。このようにして試料中の異なる元素の深さ方向分布(デプスプロファイル)を得ることができます。TOF-SIMSは照射されたすべてのイオンを集めて信号強度を計算するため検出限界に優れています。固体物質中の元素の濃度を100万分の1以下のレベルで測定することができます。

 

図1は一般的な分析機器の感度・分解能の能力を示した図です。セクター磁場方式のSIMSが50μm×50μm以上の分析領域を必要とするのに対し、TOF-SIMSは20μm×20μmの分析領域しか必要とせず、プローブサイズ(空間分解能)は50nmに達します。ppmレベルの検出感度と相まって、検出感度と空間分解能の両方のニーズを満たすことができます。さらに、微量の有機および無機汚染も分析可能です。このように、TOF-SIMSは微量分析に最適な分析ツールとなっています。

 

図1. 各種分析機器の感度と分解能の比較

 

 

図2  TOF-SIMS  M6 Plus,IONTOF社製

今回MA-tekが導入したM6 Plus ION-TOFはION-TOFの最新機種です(図2)。その特長は、最大50nmの空間分解能と30,000を超える質量分解能(m/Δm)を有することです。また、独自のDSC(Dual Source Ion Column)とGCIB(Gas Cluster Ion Beam)を搭載し、有機物の深さ方向分析も可能です。また、弊社は完全な元素データベースを持ち、豊富な分析経験を有しています。これにより、あらゆる材料の表面分析ニーズに対応することができます。

 

 

TOF-SIMSは分析対象物から放出されたすべてのフラグメントイオンを収集します。周期表上のすべての元素と同位体を検出し、試料の分子情報を得ることができます。TOF-SIMSの分析は、一般的に3つのカテゴリーに分けられますが、ここではいくつかの実際の分析事例を挙げて説明します。

 

  • マススペクトル分析
  • イオンイメージ分析
  • デプスプロファイル分析

 

 

PCBのシリコンオイル汚染分析

シリコンオイルは、耐食性、耐熱性、耐塵性、耐湿性などを有する絶縁媒体として、エレクトロニクス分野で広く使用されています。ただし、これを除去するためには、特殊な洗浄剤が必要となります。プリント基板(PCB)の表面にシリコンオイルが残っていると、その後のはんだぬれ不良やオーバーモールドなどプロセスの不具合につながる可能性があります。TOF-SIMSは、有機物の汚染を微小領域で分析する能力を備えています。そこで、正常なPCBと異常なPCBの表面のマススペクトルを比較してみました(図3)。このように、異常なPCBの表面は電荷質量比147で大きく異なっていることがわかります。そして、データベースのデータと比較すると、この信号がシリコンオイルの組成を表していると結論づけることができました。このように、有機物の種類や汚染源を特定することができます。これは、FT-IR分析のアプローチと非常によく似ています。

 

図3. シリコンオイルで汚染されたPCB表面のTOF-SIMSマススペクトルl

 

 

TFTパネル表面の組成分布

複数の半導体プロセスを経て、TFTアレイパネルは、S/D電極、画素電極、ゲート電極などの最終駆動電極を形成します。この工程では、アルミニウム、銅などの金属材料や、クロム、インジウム、モリブデン、チタン、タンタルなどのレアメタルが使用されます。TOF-SIMSのイオンイメージプロセスは、TFTアレイの電極の分布を直接観察するのに適した鮮明なイオンイメージング機能を備えています。

 

図4はTFTパネルの表面電極のTOF-SIMSイオン像です。アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、シリコン(Si)などの元素をカバーしています。イオン信号の中から3つを選び、イオンの種類によって色を変えたオーバーレイマッピング画像を作成しています。そして、ガラス基板上のさまざまな金属膜や半導体層の分布を観察します。この場合、広い面積に渡って残留するMo+の分布に明らかな異常が見られます。

 

 

図4. TFT電極組成のTOF-SIMSイオンイメージ

 

 

SiON薄膜の深さ方向分析

シリコン酸窒化物(SiON)は優れた光学特性を有しています。屈折率はSi3N4とSiO2の中間の値です。そのため、光学部品に広く用いられています。また、太陽電池の反射防止層やパッシベーション層の材料として使われるほか、数十ナノメートル以下の厚さの半導体部品として、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)の酸化膜によく使われています。

 

図5 にTOF-SIMSのデプスプロファイル解析を示します。デプスプロファイルモードを用いて、SiON膜中の酸素(O)と窒素(N)の信号の分布曲線を観察することで、シリコン酸化膜とシリコン酸窒化膜の厚さを得ることができます。本分析ではSi基板上の11nmのSiO2/SiON二層膜の結果が得られています。TOF-SIMSは最大深さ分解能がサブnmなので、先端プロセスでの低エネルギーイオン注入や超薄膜エピタキシャル構造に関して優れた分析能力を有しています。

 


図5. SiON膜のTOF-SIMSデプスプロファイル

 

 

極浅接合におけるイオン注入のデプスプロファイル

半導体部品の小型化が進むにつれ、動作時の電流リークが深刻化しています。そのためイオン注入プロセスを調整する必要があります。近年、半導体工場では部品の効率を向上させるために、ドーパントの高ドーズ化、低エネルギー注入パラメータを用いた極浅接合プロセスが開発されています。しかし、極浅接合プロセスで注入された層は通常非常に浅く、解析が非常に困難です。

 

TOF-SIMSは、一次イオンの入射エネルギーを数百電子ボルト以内に低く制御することができます。そのため、例えば四重極型SIMSよりも極浅接合ドーピングの分析に適しています。

 

図6 は4keVの入射エネルギーでBF2ドーパントをシリコンウェハに注入したサンプルのプロファイルです。TOF-SIMSを用いてボロン(B)の深さ方向分布を分析した結果、ボロンのシグナルは表面から2.7 nmに明確なピークを持つことが確認できました。また、ボロンのドーピングプロファイルが非常に明確に表示されていることも注目すべき点です。これらはすべて、注入パラメータを調整する際の重要なデータとなります。


図6. BF2イオン注入極浅接合のTOF-SIMSデプスプロファイル

 

 

VCSEL の深さ方向分布

3Dセンサーは、私たちの日常生活に徐々に普及してきました。一般的なスマートフォンの顔認識機能、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)からメタバースに至るまで、あらゆるものに不可欠な存在となっています。仮想世界のエコシステムと対話するために必要です。また、ドローン、産業用ロボット、自動運転車、セキュリティモニタリング、遠隔医療などの分野でも使用されています。3Dセンサーは人間の目のようなもので、赤外線を発生させるための高出力VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器型面発光レーザー)はセンシングシステムの重要な構成部品になっています。VCSELは一度に数万個の光点を発生させ、分析対象物に投影します。イメージセンサーは、光点から反射アレイを受けます。この信号には奥行き情報が含まれており、プロセッサによって検査対象物の表面の形状に変換されます。IC や LED コンポーネントと同様に、3D センサーは化合物半導体産業における開発の重要なキーデバイスとなっています。

 

図 7(左)は TOF-SIMS のデプスプロファイル機能を用いた VCSEL の主要成分の解析結果です。試料表面からGaAs基板までのインジウム(In)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)の分布、深さ、厚さが明瞭に確認できます。また、p-DBR(p型分布ブラッグ反射器)、MQW(多重量子井戸)、n-DBR(n型分布ブラッグ反射器)、AlxGa1-xAs構造の組成変動も確認できます。

 

図7(右)は、TOF-SIMSのデプスプロファイルとAlとGaの3Dオーバーレイ画像を組み合わせた3Dイメージ変換結果です。図中の赤と緑の千鳥配置は、1層あたり数十ナノメートルのAlとGaの空間分布を詳細に示しています。TOF-SIMSは、空間分解能と深さ分解能のデータを組み合わせ、組成分布の3Dイメージを描き出すことができるため、物質の空間分布をより直感的に確認することができます。

 

図7. VCSEL構造の主成分のTOF-SIMS深さ方向プロファイル(左)と3Dイメージ(右)。

 

 

TOF-SIMSは、あらゆる導体、半導体、絶縁材料などの分析が可能です。また、「全周期表」の質量スペクトルを持つ元素分析機能とppmレベルの検出感度を備えています。さらに、TOF-SIMSは面内方向の空間分解能が最大50nm、深さ方向の分解能が最大0.1nmであり、極浅接合、多層膜構造、微量の有機・無機汚染などの分析に最適です。XPSやFT-IRの分析手法の限界を補うことができます。

 

これらの多くの強みから、近年、TOF-SIMSは多くの種類の分析に広く利用されるようになってきました。そこでMA-tekでは、多くのお客様の分析ニーズにお応えするため、最新モデルM6 Plusを導入しています。これにより、より充実した分析サービスが提供できるものと考えています。

 

 

 

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